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技術で社会課題を解決したい。

Ezofrogsで深めた起業家としての視点と、やり続けることの意味。

​アディクウ デービッド

ADIKWU DAVID

釧路工業高等専門学校 4年生​(2025年当時)

​愛称:David

出身地:ナイジェリア

​テーマ:工場で起こるヒューマンエラーは、技術でもっと減らせるのではないか。そんな問いから、ネジの締め付けミスによる事故を防ぐ安全支援装置の開発に挑戦。

「なぜ、工場の小さなミスは大きな事故につながってしまうのか。」

そんな問いから、Davidさんの挑戦は始まりました。

 

ロボットや自動化システムに関心を持ち、工学を学ぶ中で見えてきたのは、技術そのものだけではなく、そこで働く人の安全や環境の問題でした。工場の現場で実際に起きうるヒューマンエラーに触れたことが、その違和感をより確かなものにしていきます。

 

その問いと向き合うために、Davidさんが挑戦したのがEzofrogsでした。

起業への一歩を、Ezofrogsで。

ーーまず、日本に来た理由や、工学に関心を持ったきっかけを教えてください。

文部科学省の奨学生として、2023年4月に日本へ来ました。今は釧路工業高等専門学校で機械工学を学んでいます。高校時代から留学したい気持ちはあって、いろいろな国を考えていました。

もともと子どもの頃は、医者になりたいと思っていた時期もありました。人の役に立つ仕事がしたいという思いがあったんだと思います。でも中学・高校で勉強する中で、生物学は得意ではあったものの、本当に好きなのはそこではないと気づきました。むしろ、物理や化学、数学のほうが好きで、自然とそちらに惹かれていきました。

 

ーーそこから工学に関心を持つようになったんですね。

はい。その流れで、ロボットや自動化システムにも関心を持つようになりました。技術を学ぶだけではなく、将来的には、技術で社会問題を解決するようなことをやってみたいと思っていて。工学を学ぶなら、実験を重視できる環境に行きたいと考えるようになりました。ナイジェリアは、学校で実験をする機会があまり多くありません。でも、工学を学ぶ上で実際に手を動かしながら学ぶことがすごく大事だと思っていました。大学進学を考える中で日本の高専のことをオンラインで知り、「ここで学んでみたい」と思ったのが、日本を選ぶきっかけでした。

 

ーーEzofrogsを知ったきっかけは?

もともと起業家になりたい気持ちがあって、日本の起業環境をもっと知りたいと思っていました。ただ、工学寄りでビジネスにはあまり自信がなかったんです。そんな時に学校のポスターなどでEzofrogsのことを知って、Webサイトを調べたり、釧路の説明会に参加したりしました。そこで大湊さんと話したことも、応募のきっかけになりました。

 

ーー最初に聞いたとき、どんな印象でしたか?

「本当にやっていけるのだろうか」という気持ちはありました。特に、起業やビジネスの話になるとまだ知らないことが多いと感じていたので、不安もありました。でも同時に、日本で挑戦するなら、こういう環境に飛び込んでみたいとも思いました。

 

ーー参加を決めるまでに迷いはありましたか?

ありました。一番大きかったのは、日本語の壁です。オンライン研修や対面研修がどんな形で進むのか、最初は分からない部分も多くて不安もあったのですが、「まずやってみよう」と思えたことが大きかったです。完璧に準備してからではなく、挑戦しながら学ぶしかないと感じていました。今振り返ると、その一歩がすべての始まりだったと思います。

工場の安全を、技術で支える。

ーーEzofrogsではどんな課題解決に取り組みましたか?

工場の自動化や安全性に関わる課題に取り組みました。具体的には、ネジやボルトの締め付けミスによる事故を減らすための装置「Intelli Torque(インテリトルク)」の開発です。工場では小さな部品でも、締め方を間違えると大きな事故につながることがあります。そうしたヒューマンエラーを減らしたいと思い、チームでプロトタイプを開発しました。

 

ーーその課題に興味を持った理由は?

もともと、ロボットや自動化システムに関心があり、機械工学を学んでいました。将来的には、技術で社会課題を解決するような、工学的なアントレプレナーになりたいという思いもありました。だからこそ、ただ装置をつくるだけではなく、その技術が現場で働く人の安全や環境にどう役立つのかにも関心がありました。

その思いがより具体的になったのが、去年8月に参加した茨城でのインターンです。食品加工ロボットをつくっている工場で、2週間ほどロボットの組み立てに関わりました。実際の現場で先輩たちと交流しながら作業できたことはとても楽しく、学ぶことも多い貴重な経験でした。

その中で、ネジの締め付けに関する事故やミスが起こりうることも知りました。小さな作業に見えても、締め方ひとつで安全性に大きく影響する。だからこそ、「ネジを締める工程をもっと安全にできないか」「人の注意だけに頼らずに支えられる仕組みをつくれないか」と考えるようになり、今のサービスやシステムの着想につながっていきました。

 

ーーどんなサービスやプロダクトを作りましたか?

ボルトの締め付け状態を確認しながらデータを取り、異常を検知するためのプロトタイプです。去年12月に最初の試作ができて、そこから実際にデータを集めながら改良していきました。AIも組み合わせながら、「正しい締め付け」と「危険な状態」を見分ける仕組みをつくろうとしています。私が目指しているのは、人がもっと安全に働けて、テクノロジーがその安心を支える社会です。特に工場や医療のように、少しのミスが大きな影響につながる現場では、技術の力で事故を減らせるはずだと思っています。

 

ーープロダクトを作ってみて、どんな課題や壁がありましたか?

難しかったのは、プロダクトをつくることそのものよりも、その価値をお客さんにどう伝えるかでした。装置としての必要性や技術的な面白さは感じていましたし、話を聞いた相手も「たしかに問題はあるよね」とは言ってくれます。でも、そこから「だから今すぐ導入したい」「この装置が絶対に必要だ」とまでは、なかなかならなかったんです。

ヒューマンエラーのリスクは理解されていても、現場では他にも優先度の高い課題がたくさんあります。だから、「あったらいい」と思ってもらえても、「今すぐお金を払ってでも導入したい」という緊急性にはつながりにくい。そのギャップは、とても大きな壁でした。

フォーカスが定まった瞬間。

ーー一番大変だったことは?

一番大変だったのは、工場の中にある数多くの課題の中から、本当に向き合うべき課題を絞ることでした。

現場を見れば見るほど、「ここも改善できそう」「これも危ないかもしれない」と、気になることがたくさん見えてきます。でも、大企業のように大きなリソースがあれば解決できることでも、私たちが持っている今の知識や時間、技術、体制では難しいものも多かったです。

本当に取り組むべき課題は何なのか。課題はたくさん見えているのに、どれにフォーカスするべきか決めきれない時期が長く続きました。

その迷いは、フィードバックにもそのまま表れていたと思います。発表や相談の場では「問題設定が抽象的だ」「課題がまだ広い」というコメントをもらうことがありました。課題の特定に迷っている実感があったので、そのフィードバックはすごく刺さりました。言い換えると、何に取り組むのかが定まっていないことで、誰のためのプロダクトなのか、どんな価値を届けたいのか、ビジネスとしてどこに向かうのか も曖昧になっていたんです。

ペルソナをどう設定するのか、この装置をどんな現場に届けるのか、どんな切り口なら必要性を感じてもらえるのか。そうしたビジネスの方向性も、最初から見えていたわけではなくて、かなり手探りの状態でした。今振り返ると、一番の壁は「装置をどう作るか」ではなく、私たちが本当に解くべき問いを、限られたリソースの中で定めることだったと思います。

 

ーー「ここが転機だった」と思う出来事は?

ありました。去年8月のインターンで、茨城の食品加工ロボットの工場に入った時、ネジの締め付けに関する課題やリスクにはすでに触れていました。ただ、その時はまだ「課題はあるな」と感じるくらいで、それがテーマになるとははっきり結びついていませんでした。

その後も模索していたのですが、大湊さんに「人に話してみるといいよ」と言われて、釧路高専ロボット部 部長に相談したことが大きかったです。そこで、インターン中に感じていた違和感が、実際に現場の課題としてあることを改めて確認できました。

その時に「ここに絞るべきだ」と思えました。インターンでの実体験と、今取り組むべき課題がようやくつながった感覚があって、そこが大きな転機だったと思います。

 

ーー印象に残っているフィードバックや言葉は?

これは私が言っていた言葉を大湊さんがいつも言ってくれていたのですが「Keep trying & Never give up」という言葉です。

シンプルですが、Ezofrogsの期間中ずっと支えになっていました。うまくいかない時も、完成していない時も、とにかくやり続けることが大事だと教えられた気がします。

 

ーーこの経験を通して、新しく見えたことや気づきはありますか?

LEAPDAYで、まだ完成度の高くないプロトタイプを見せながら発表したことです。以前なら、完璧じゃないものは見せたくありませんでした。でもEzofrogsを通して、「小さくてもまず作ってみる」「見せて、フィードバックをもらいながら改善する」ことの大切さを学びました。そこは大きな変化だったと思います。

Keep trying & Never give up.

ーーEzofrogsで強く影響を受けた人はいますか?

たくさんいます。起業家の方々から受けた刺激も大きかったですし、Ezofrogsの仲間たちにもすごく影響を受けました。

東京研修では、何年も挑戦を続けてきた起業家の話を聞いて、「すぐに結果が出なくても、このままトライし続けていいんだ」と思えましたし、台湾研修ではもっとグローバルに考えていいんだと気づかされました。

仲間たちも、それぞれ気持ちが強くて、卒業後も声をかけ合える存在です。いろんなバックグラウンドや考え方を持つ人たちと出会えたこと自体が大きな財産でした。

 

ーーこの経験を通して、新しく見えたことは?

一番大きかったのは、「完璧じゃなくても行動していい」と本気で思えるようになったことです。以前は、ちゃんとできる状態になってからでないと動けないタイプでした。でもEzofrogsでは、40%でもまずやってみること、小さくてもプロトタイプをつくって見せることが大事だと学びました。

 

ーー「起業家になりたい」という気持ちに変化はありましたか?

Ezofrogsに入る前から、起業家になりたいという気持ちはありました。でも、その時はまだ憧れに近い部分もあって、「本当にその道を選ぶのか」という迷いもありました。

6ヶ月間のプログラムを通して、実際に課題をビジネスで解決してきた起業家の方々に出会えたことは、とても大きかったです。もともとチャレンジすることが好きでしたが、その姿を間近で見る中で「技術を使って社会課題を解決したい」という思いが以前よりもはっきり強くなりました。

 

ーー今後挑戦したいことは?

これから研究室に入るので、社会課題を解決するような研究に取り組みたいです。研究として面白いだけではなく、ビジネスとして社会に届く価値があるものを探したいと思っています。

今取り組んでいる装置も、工場だけでなく医療分野に応用できる可能性があると感じています。たとえば外科手術のように、人の手で行う精密な作業にはどうしてもヒューマンエラーが起こりえます。そうした領域でも、技術で安全を支えられるかもしれません。そこは今後もっと深めていきたいテーマです。

ーーEzofrogsの経験はこれからどう活きそうですか?

課題を見つけること、まず作ってみること、人に見せて改善すること。この一連のプロセスは、これから研究をしていく上でも、将来起業に挑戦する上でも必ず活きると思っています。

 

ーー参加を迷っている人にメッセージをお願いします。

Ezofrogsは、絶対に良い経験になると思うので、参加できるならした方がいいです。

ただ、簡単なプログラムではありません。課題にぶつかることもあるし、挫折しそうになることもあるし、フィードバックをたくさん受ける中で「進んでいないのでは」と感じることもあると思います。

でも、たとえ最初は課題が抽象的でも、「何か解決したいことがある」「まだ言葉にできないけれど気になる問いがある」という人にとっては、とても役に立つプログラムだと思います。そして何より、最後までやってみることに大きな意味があります。

起業家の方々も、最初からうまくいっていたわけではなくて、課題や失敗、山や谷を乗り越えながら今にたどり着いていました。その話を聞いて、すぐに成果が見えなくても、やり続けること自体に意味があるのだと実感しました。

たとえ将来、起業家にならなかったとしても、この経験は必ず他の場面で活きてくると思います。だから、迷っているならぜひ挑戦して、始めたなら最後までやり切ってほしいです。

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