
「なぜスポーツは、始める場所で差が生まれるのか。」
Ezofrogsで向き合った機会格差という問い
財津 櫻
Sakura Zaitsu
市立札幌開成中等教育学校 4年生(2025年当時)
愛称:さくら
出身地:札幌
テーマ:テニスに打ち込む高校生として感じた「スポーツの機会格差」という問いに向き合い、セルフコーチングアプリの開発に挑戦。
「なぜスポーツは、始める場所によって差が生まれてしまうのだろう。」そんな問いから、財津 櫻さんの挑戦は始まりました。テニスに打ち込む高校生として感じていた違和感。それは、コーチの有無や地域によって、スポーツの環境に大きな差があることでした。その問いと向き合うために、彼女が挑戦したのがEzofrogsでした。
「悔しい」から始まったEzofrogsとの出会い
ーーEzofrogsを知ったきっかけは?
一昨年の夏、「TEDxSapporo Youth」というイベントに参加した時に、会場でEzofrogsがブースを出していて、そこで初めて存在を知りました。
その後、12月の成果報告会にも足を運びました。
同級生が登壇していたのですが、その発表を聞いて「ちょっと悔しいな」と思ったんです。
自分もボランティア活動などはしていましたが、社会に何か影響を与えている実感はありませんでした。
Ezofrogsの発表は、「活動している」だけではなく、社会に何を起こすのかを本気で考えているように見えたんです。
そのとき、「自分はまだまだだな」と感じたことが、挑戦を考えるきっかけになりました。
ーー最終選考はどうでしたか?
最終選考では、グループで社会課題を解決するアイデアを考えるワークがありました。
そのとき、同じ5期生の一色 潤くん(以下、潤くん)と同じグループだったんです。
潤くんはAIを積極的に活用していて、アイデアの出し方もとても鋭くて圧倒されました。
当時の私は、まだAIをあまり使ったことがなくて、少し抵抗感もあったのですが、「こんなに使いこなしている人がいるんだ」と驚きました。
グループには大学生など年上の人も多くて、最初は少し緊張しました。
でも、Ezofrogsに応募してくる人たちなので、みんな意見が強くて、受け身の人はほとんどいませんでした。
だからこそ、意見をまとめるのはとても難しかったです。
ただ、17時に選考が終わったあと「残って作業してもいいよ」と言われて、潤くんと一緒にアイデアを考えていた時間はすごく楽しかったですね。
ーー参加を決めるまでに迷いはありましたか?
かなり迷いました。
当時は硬式テニスにも本気で取り組んでいて、大会や練習との両立ができるのか不安でしたし、受験勉強のこともありました。
一度ノートに、テニスとEzofrogsのスケジュールを書き出して整理したこともあります。
最終的に背中を押してくれたのは母でした。「とりあえずやってみなよ」と。
二つ同時にやってみないと分からないこともある。その言葉で、一歩踏み出すことができました。
スポーツの「機会格差」という問い
ーーEzofrogsではどんな課題解決に取り組みましたか?
私は「スポーツの指導者不足」と「地域格差」という課題に取り組みました。
このテーマを考えるようになったのは、自分自身のテニスの経験が大きいです。
テニスは小学校1年生の頃から続けていて、小学生の頃はテニス選手になることが夢で、本格的に上を目指すなら、強い環境に身を置かないといけないとも思っていました。
小学6年生のとき、全国大会に出場する機会があったのですが、そのときに強く感じたのが、環境の差でした。
本州の選手たちは練習量も多く、レベルも高い。
北海道は雪国なので冬は外で練習できず、環境的にも不利だと言われることがあります。
「北海道は本州より2年遅れている」と言われることもあって、それがとても悔しかったのを覚えています。
さらに、北海道の中でも地域によって環境は大きく違います。
札幌にはスクールも多く、指導してくれるコーチもいます。でも帯広や旭川などでは、指導できる人が地域に数人しかいないこともあります。
つまり、スポーツはどこで始めるかによって、得られる機会が大きく変わってしまう。
環境によって成長の機会が変わることに、以前から違和感を感じていました。
スポーツをしたい人が、環境によってチャンスを失ってしまうのはもったいないと思ったんです。
ーーその違和感から、どんな問いが生まれましたか?
私が考えたのは「コーチがいなくても成長できる環境をつくれないか」という問いでした。
自分で自分を振り返り、改善しながら上達できる仕組みがあれば、指導者の有無による差を少しでも小さくできるのではないかと思ったんです。
ーーどんなサービスやプロダクトを作りましたか?
スポーツのセルフコーチングを支援するアプリの開発に取り組みました。
AIとの対話を通して、自分のプレーを振り返りながら改善点に気づけるような仕組みです。
さらにARを使ってフォームを確認できる機能なども取り入れています。
理想は、コーチがいなくても、自分で成長できる環境をつくること。
もちろん、人から教わる価値はとても大きいです。
だからこそ、時々コーチが来てくれる環境や、外部の指導者と関われる仕組みも組み合わせながら、スポーツの環境を広げていけたらいいと思っています。
ーーどんな社会になったらいいな、と思いますか?
みんなが楽しく、平等にスポーツを楽しめる社会になったらいいなと思っています。
活動を通して気づいたのは、自分は「スポーツのスタートラインが違うこと」がすごく嫌なんだということでした。
コーチがいる人もいれば、いない人もいる。環境によって、最初から差が生まれてしまうことがあります。
でも、本当は同じスタートラインからスポーツを始められる環境があったらいいなと思っています。
機会の差は、スポーツだけではなくていろいろなところにもあると思います。
例えばEzofrogsも、そもそも存在を知らない人もたくさんいると思います。
私は中学校の頃からいろいろな活動を知る機会がありましたが、環境によって得られる情報やチャンスは大きく変わると感じています。
もし、知っている情報や機会が同じラインから始められたら、もっと楽しく挑戦できる人が増えるんじゃないかなと思うんです。
やりたいことがあるのに、環境や情報の差で悩んでしまうのはもったいないと思います。そういう学生を少しでも減らしたいです。
中間報告会でぶつかった壁
ーー一番大変だったことは?
中間報告会の時期が一番苦しかったです。
テニスの大会も近くて、時間的にも精神的にも余裕がなくなってしまいました。
「自分の意見を言っても伝わらないかもしれない」と感じてしまうこともあってメンバーとのコミュニケーションもうまくいかない部分がありました。
結果として、発表も納得できる形にはなりませんでした。そのときは、自分のコミュニケーションの課題を強く感じました。
ーー人生の中でも、かなりしんどかった時期でしたか?
そうですね。振り返ると、かなりしんどい時期だったと思います。
東京・名古屋研修の前に、プロジェクトが一度ゼロに近い状態になった時は、どうしたら良いのかわからず「本当にこのサービスでいいのかな?」とずっと考え続けていました。
途中で「もしかしたら自分がやりたいのはスポーツではなくて情報格差の問題なのではないか」と考えたこともあったり、テーマについて、かなり紆余曲折がありました。
ーーそこまで迷いがあったんですね。
はい。自分は「スポーツ振興がしたい」と言っているけれど、それは本当に自分の思いなのか、と疑う時期がありました。
Ezofrogsでは毎日のようにフィードバックをもらうので、だんだん「きれいなストーリー」を作ろうとしてしまう感覚もあったんです。
「自分は本当はそう思っていないのに、そう思い込もうとしているだけなんじゃないか」
そんなふうに、自分自身を疑ってしまうこともありました。
ーー一番大変だったことは?
中間報告会の時期が一番苦しかったです。
テニスの大会も近くて、時間的にも精神的にも余裕がなくなってしまいました。
「自分の意見を言っても伝わらないかもしれない」と感じてしまうこともあってメンバーとのコミュニケーションもうまくいかない部分がありました。
結果として、発表も納得できる形にはなりませんでした。そのときは、自分のコミュニケーションの課題を強く感じました。
ーーそこからどうやって立て直したんですか?
転機になったのは、いろいろな地域の学生に話を聞いたことでした。ちょうどその頃、全道大会もあって、対面でいろいろな地域の学生に話を聞く機会があったんです。その中で、スポーツ環境の違いや悩みを直接聞くことができました。一度アプリのプロトタイプも作ってみたんですが、実際に形にしてみるとすごく楽しくて。そのとき、株式会社e-lamp. 代表取締役の山本 愛優美さんに言われた「自分が届けたいと思っている人と会う時間が大切だよ」という言葉も印象に残っています。その言葉を聞いて、アプリを作ることだけではなくて、本当に使う人の声を聞くことが大事なんだと思うようになりました。
ーーそこから自分のテーマが見えてきた?
そうですね。いろいろ迷った時期はありましたが、最後に残ったのは「スポーツをする人を支えたい」「もっと楽しくスポーツをしてもらいたい」という思いでした。
そこが、自分の中の一番根っこにある気持ちなんだと気づけたことは、大きな経験でした。
振り返って見えたこと
ーーEzofrogsで強く影響を受けた人はいますか?
はい。二人居るのですが、まず一人目は、最終選考で同じチームだった潤くんです。
潤くんは、いつも核心をつく発言をする人でした。
例えば「Ezofrogsを続ける意味はあるのか?」という問いを投げかけられたこともあります。
Ezofrogsに参加するためには多くの人が関わってくれていて、お金も時間もかけてもらっています。その中で「自分たちは本当にそれに応えられているのか?」という問いを投げかけてくれたこともありました。
12月のLEAPDAY前には「思いとサービスが直接つながっていないんじゃないか」と、率直なフィードバックをくれました。
潤くんは、誰よりもピッチをして、サービスも実際にお金を払ってもらえるところまで作っていました。だからこそ「この人を超えたい」と思える存在でしたし、潤くんの言葉は、自分自身に問いを投げ続けるきっかけになったと思います。
二人目は、山本 温広くんです。
同じ学校で同じ学年なのですが、10月くらいから、すごい集中力でプロジェクトを進めていて、本当に努力を続けている姿を近くで見ていました。
同じ学校で普段一緒に過ごしていても、「今このためにこういうことをやっているんだ」と知ると、尊敬する気持ちが強くなりました。その姿を見て、自分ももっと頑張ろうと思えました。
ーーこの経験を通して、新しく見えたことや気づきは?
まず一つは、今の時間を大切にしようという意識が強くなったことです。
チャンスは待っていても来るわけではなくて、自分から動かないと得られないものだと感じるようになりました。
実際に、今年の1月には「トビタテ留学Japan」に採択され、3週間メルボルンに留学しました。
そのとき、スポーツ科学を研究している大学や企業、スポーツスクールなどに、自分から連絡を取って訪問させてもらいました。
メールだけではアポイントが取れなかったところにも、直接お願いしに行ったこともあります。
最初はすごく勇気がいりましたが、実際に会ってみると、みなさんとても親切に話を聞いてくれました。
教授にお話を聞ける機会もあって、自分から動くことでこんなにも世界が広がるんだと感じました。
また、台湾研修も大きな経験でした。初めての海外だったので、英語で話すことも最初は怖かったです。
でも実際に話してみると、思っていたよりも多くの人が親切に耳を傾けてくれて、現地の大学の方にアプリのアイデアを試してもらえる機会もありました。
その経験から、「世界は思っているより優しい」と感じるようになりました。
何もしないで怖がって終わるより、まず話してみる方がいい。行動してみることで、世界の見え方が変わったと思います。
ーー今後挑戦したいことは?
小さい頃は、スポーツを頑張る人を支えたいと思い、スポーツトレーナーになりたいと思っていました。
でも最近は、一人の選手を支えるだけではなくて、スポーツを楽しめる環境そのものをつくりたいと思うようになりました。
目の前の一人を笑顔にすることも素敵ですが、環境や仕組みを整えることで、もっと多くの人がスポーツを楽しめるようになるかもしれません。
だからこそ、スポーツの機会を広げる仕組みをつくりたいと思っています。
今はアプリという形で課題解決に取り組んでいますが、人と人が直接関わるスポーツ環境づくりにも興味があります。
オーストラリアで見たスポーツ環境がとても理想的だったので、そうした環境を北海道にも持ち帰りたいと思っています。
自分の問いに向き合い続ける姿勢は、これからも大切にしていきたいです。
ーー参加を迷っている人にメッセージをお願いします!
きっと迷っている理由はたくさんあると思います。
参加するメリットも、参加しないメリットもあると思います。でも、その比較だけでは測れない経験がEzofrogsにはあります。
もし少しでも「やってみたい」という気持ちがあるなら、挑戦してみてもいいのではないかと思います。